⸺その大阪もんは?
僕が尊敬する師匠、大阪出身の現代美術家・嶋本昭三さんの本『芸術とは、人を驚かせることである』です。戦後を代表するアーティスト集団「具体美術協会(GUTAI)」の創立メンバーであり、「具体」という理念の提案者。絵の具を爆発させてぶっ放す「大砲絵画」やヘリコプターから絵の具を落とすパフォーマンス、自分の頭をキャンバスにした「スキンヘッドアート」など、ユーモアに溢れた型破りな表現で、アートの歴史を変えてしまった関西の宝です。
⸺その大阪もんのええところを教えてください。
まず第1章から「スルメに切手を貼って送る」というメールアートの話が登場するんですが、嶋本さんが一貫して語っているのは「アートは誰がやってもいい自由なもの」だということ。結局のところ、芸術家かそうじゃないかって「やっちゃえるかどうか」の違いでしかない。僕は過去に「楽器で絵を描く」というパフォーマンスで色んなイベントに呼ばれていたんですが、絵のうまさとかスキルが評価されたのではなく、思いついてもやらないことを僕がやっちゃってた……ってことだ思うんですよ。そんな「表現の自由」の本質を教えてくれる一冊です。
⸺あなたにとって大阪もんとは?
大阪のアートって、やたらとスケールがデカくて、訳わからないものが多いじゃないですか。まず「よくそんなもん作ろうと思ったな」って感じの(笑)。多分、大阪人は深く考える前にやっちゃってると思うんですよ。そして、そんな訳わからないものを「わからんけど、なんかええやん」って受け入れる……。決して理解があるわけではなく、わからないまま受け入れる土壌がある。僕は今「作品を作らないアーティスト」と名乗っているんですが、常に「あえてちゃんとしない」を心がけています。なんとなく気配的に世の中を見ながら、他人の評価や空気を無視してやれる「大阪らしい表現」を大切にしたいですね。
※掲載時(2023年5月8日)の情報です
取材・撮影:トミモトリエ