超生命体の偏愛図鑑

テリー さん

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アーティスト(33歳)
大阪市浪速区在住/フィンランド出身

0.03mmのペンと切り貼りで2年。潜在意識に委ねて描いた観音様

⸺そのアートは?
7年前、日本に来てすぐのころに描いた、私にとって転機になった一枚です。フィンランドの美術大学では彫刻を中心に制作していて、こういう絵は描いていませんでした。それが大きく変わったのは、日本で仏教や神道、それにまつわる美術に触れたから。ヨーロッパで芸術が花開くよりもっと昔から、アジアにはとても高いレベルの文化があった。その技術と歴史に「本当にすごい!」と心から感動して、私も自分なりに、神様みたいな存在を描いてみたくなったんです。だから、この絵は顔から描き始めました。モチーフにしたのは、大好きな観音様。自分だけの観音様をつくりたかったのですが、完成した作品は、どこか森の精霊みたいになっていて。きっと、フィンランド出身の私の中にある何かが、知らないうちに出てきたんだと思います。着物の柄から着想した部分は、0.03mmのマーカーで一本ずつ描き込みました。

⸺そのアートのええところを教えてください。
いちばん気に入っているのは、三つの浮かぶ月。なぜ三つなのかは、実は自分でも分からなくて……。その感覚がどこから来たのか、私のほうが知りたいくらい。メディテーション(瞑想)とは少し違うかもしれませんが、無意識で没頭して書いていくと、気づいたらこうなっていたという感じです。だからなのか、私の作品は住んでいる街や、周りにいる人の影響を受けていることが多いです。実はこの絵の背景は、当時住んでいた京都の風景なのですが、完成形が見えるまではかなり手こずって、上から紙を貼っては描き直して、を何度も繰り返したんです。このスタイルで描くのは初めてだったので、自分で納得できるまで2年近くかかりました。

⸺あなたにとってアートとは?
私の生活そのもの、というか、それよりも大きなものかもしれません。アートのないライフスタイルは、自分では想像がつかないくらい。子どものころからずっと絵を描いてきたので、アイデンティティみたいなものだと思います。私は、いい作品は潜在意識から出てくると思っているんです。「こうしたい、ああしたい」と頭で考えて描くときって、なぜかうまくいかなくて。細かいことを考えず、自然な感覚で描いているときは心地いいし、出来上がったものを好きになれることが多いんです。だから、描き終わるまでは、何が出てくるか自分でもわからない。でも、それを自分自身で楽しんでいるのかもしれません。大阪に移り住んで1年くらい経って、また新しいスタイルが生まれかけています。これからも、自分の変化を受け入れながら、制作を続けていきたいと思っています。

※掲載時(2026年7月9日)の情報です
取材・文・撮影:山瀬龍一