⸺その帽子は?
僕が会長を務める「関西カレー保安協会」のオリジナルキャップです。フロントに入った刺繍「SAVE THE CURRY」は協会のスローガンで、関西弁にすると「守らなあかんカレーがあるねん」。
現状は協会のメンバーだけが持ってる非売品なんですけど、周りからも「欲しい」って言われることが多くて。ある日、イベントに行こうと思って帽子を探しても見つからなくて、家中探したら、27歳の次女の部屋にあったんですよ(笑)。気に入って勝手に被ってたみたいで。でも、若い子がファッションとして被りたくなるようなデザインにできたってことは、狙い通り。嬉しいですねつけるのが生きがいです。
⸺その帽子のええところを教えてください。
ただのファッションアイテムじゃなくて、これを被ることで「信用」と「覚悟」が生まれたところ。この協会を立ち上げてから、説得力が増したのか、カレーイベントの監修やテレビ出演の仕事が一気に増えました。
もちろん、単純にモノとしても気に入ってます。カジュアルで普段使いしやすいし、他の協会メンバーたちもイベントの時だけでなく、プライベートでよく被ってますね。
この「SAVE THE CURRY」は、心斎橋パルコでやってるカレーイベントの名前でもあって。アパレルや音楽が好きな若い世代がたまたま通りかかった時に、「なんかカッコいいことやってるな」「ファッション的にイケてるやん」って思って、フラッとカレーの世界に入ってきてほしい。そういう、王道じゃないところからの入り口になり得るのが、この帽子のええところかも。娘が盗むくらいやから、そろそろ売ってもええかなと思ってます(笑)
⸺あなたにとって帽子とは?
関西のカレー文化を守り、広げるための「ツール」ですね。
正直に言うと、今の関西カレー業界ってしんどいんですよ。作り手はみんな美味しいものを作ろうと必死やけど、原材料費の高騰もあって、利益が出にくい。関西で育ったスター選手みたいな店が、稼げる東京に出て行ってしまう現状もある。
「スパイスカレーブーム」なんて言われてますけど、僕はまだ本当のブームにはなってないと思ってます。マニアの間で成熟しただけで、一般層まで巻き込めてない。
かつて僕が「コロンビア8」で初めてスパイスカレーを食べて衝撃を受けたように、カレーには人生を変えるパワーがある。でも、作り手が疲弊して店がなくなったら元も子もない。だから「SAVE THE CURRY」なんです。
アパレルとか、今までカレーと縁のなかった層を巻き込んで、新しいムーブメントを作る。
この帽子は、そのための作戦の一つであり、僕なりの「守る」という意思表示ですね。
※掲載時(2025年11月26日)の情報です
取材・撮影:トミモトリエ




