嘘が実体化?ありそうでないニュースを配信し続けて20年「虚構新聞展」in 大阪(事実)イベントレポート

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トミモトリエ

ツッコミ

実際にありそうで存在しない「嘘のニュース」を配信し続けてきた人気サイト「虚構新聞」が、創刊20周年のエイプリルフールに合わせたリアル展示会「虚構新聞展」を開催しています。

場所は大阪・中之島の朝日放送テレビ本社横にある「Art Beat Cafe NAKANOSHIMA」。イベントの開催は本当なのか……? と、疑いながらも初日の3月27日に潜入してきました。

2004年3月以来、虚構世界の事実を報じつづけてきた「虚構新聞」。展示開催のニュースが虚構新聞のXアカウントから発表されると、「嘘じゃないの?」という疑いの声と共に「虚構新聞社が事実を述べた」という事実にSNSがザワつきましたが、会場入り口に置かれた社主UKさんのあいさつ文を読んでも、その疑われっぷり……というより「虚構新聞は絶対に嘘しか発信しない」という読者からの厚い信頼が伺えます。

虚構新聞とは?
虚構新聞は社主UK氏の個人運営による日本のテキストサイト。「実際にありそうで存在しない」ネタをニュースとして新聞風に掲載。2004年春に設立され、以来およそ20年、社会問題や時事ネタを面白おかしく風刺した記事を発信し続けている。記事はユーモアや皮肉に満ちており、多くのネットユーザーから支持されているが、時として真実と区別がつかないほどリアルなものもあり、誤解を招くことも。そのため、記事の冒頭に「虚構新聞」という文字を大きく表示、虚構であることを明示している。また記事が後日実現してしまうことも数回あり、その際には謝罪広告を掲載している。2012年に文化庁メディア芸術祭でエンターテイメント部門の審査委員会推薦作品にも選ばれている。
虚構新聞

こちらが事前に公開されたCM動画(キャスターを務めるのは小塚舞子さん)

今回の展示会では、今までに発表された虚構記事が、さまざまな形で展示され実体化されるということですが、その実体化を担当したのが、『ヘンとネン』では「お宅の玄関美術館」の連載でおなじみの現代工作家・ミズグチグッチさんなのです。

ということで、グッチさんに会場を案内してもらいました。

会場に入ってすぐ目につくのが、歴代の虚構新聞ニュースと現実世界と比べて見る「虚構新聞社20年史」のパネルと、大阪マルビルの電光掲示板を再現した模型。

電光掲示板には、虚構新聞のニュース見出しが流れ続けています
嘘も入り混じっていますが、虚構新聞のスタートは2004年(Facebookやmixiのサービス開始と同時期)

もともと、ネットのニュースを紹介する個人サイトを運営していたUKさん。2004年のエイプリルフール企画として書いた記事が好評だったため、嘘ニュース専用サイトとして独立させたのが「虚構新聞」のはじまり。見出しを見るだけで笑ってしまう名作嘘ニュースの数々は、社会問題や時事ネタを風刺したものも多く、社会の出来事と見比べると「虚構の世界はなんて平和でやさしいのだろう……」と、なんだか泣けてきます。

AIの進化と共にフェイクニュースが溢れる世界になった今、インターネットの歴史を振り返る意味でも感慨深いものがありますね……。

そして、会場には、虚構新聞のネタを「実体化」したさまざまなものが展示されています。

究極の初心者向け「2マス将棋」発売 愛好家考案

究極の初心者向け「2マス将棋」は、実際に触れて遊ぶことができます。

穴ずれパインアメ、1.3億円で落札 過去2位の高額

こちらは、製造過程で偶然出来上がったエラー菓子の中でも最高額で落札されたとされる「穴ずれパインアメ」の実体化。会場内のモニターに流れる「虚構新聞ニュース」の中で映像化されているのですが、パインアメ工場の撮影から公式の見解まで入っていて完成度が高すぎる!

映像化された虚構新聞ニュース
映像のクオリティが高すぎる
ちゃんと公式に許可取りして取材しているという

他にもさまざまな虚構ニュースが映像化されているのですが、このニュース原稿を笑わずに読むの難しすぎるでしょ……(ニュースキャスターをつとめた小塚舞子さん曰く「何度も笑って撮り直した」とのこと)。

「コロナ禍の新しい運動会」のニュースで出てきたロングバトン
UKさんのこだわりにより虚構新聞に書かれた通りの長さに

コロナ禍でソーシャルディスタンスを徹底した運動会で使われたとされる「2mのロングバトン」も展示されていました。この虚構ニュースは、後日、神奈川県相模原市の小学校にて長さ2メートルのバトンを使った運動会が実際に開かれたことが判明して、虚構が本当になってしまった「誤報」の展示でもあります。

「2mのロングバトンも コロナ禍で「新しい運動会」 マキャベリ小」についてお詫び

虚構が現実のものとなってしまった謝罪文
こちらの「森永チョコ、144個入り『グロス』発売」も数日後に現実に

虚構が現実になってしまうと、「あるまじき誤報」として度々謝罪している虚構新聞。こちらは、2013年7月に掲載された「DARS(ダース)」12箱分144粒のチョコレートが入った「GROS(グロス)」が販売される……という虚構記事に、販売元の森永製菓がのっかり、実際に限定発売してしまったというもの。

また、会場には、虚構新聞記事が執筆されるデスクをイメージした「社主デスク」がフォトスポットとして設置されています。

ちなみに、写真に写っているのは、お忙しいところ5分だけ撮影のためにお時間をいただいた本物のUKさんです。本物かどうかわからなすぎて、撮影は影武者でもよかったのでは……? と思ってしまったのは内緒です。

せっかくなので別カットも
「次の予定があるので」と撮影後すぐに帰ってしまったUKさん

素顔は明かしていませんが、滋賀県在住で本業は教育関係の仕事をしているUKさん。実際の展示物を見たのはこの日が初めてだったそうですが、実体化された虚構の世界を大変喜んでおられました。

Processed with VSCO with hb2 preset

そして、会場のArt Beat Cafe NAKANOSHIMAでは、見るだけでなく味わえるコーナーも! 「実際に味わえる嘘メニュー」として会期中限定の「虚構新聞展コラボメニュー」が登場。

ベルリンの壁丼(元ネタはこちら
「千円パン」がのった「千円パフェ」
「千円パン」はUKさんの講義で虚構新聞を作った成安造形大学の学生が考案したもの
コラボメニューのトレイシートは「衛府嵐大学マークシート」になっています(元ネタはこちら

虚構新聞の記事を実際に新聞記事風に印刷してスクラップした、スクラップブックのコーナーも読み応えありあり。これを読むだけでもかなり時間が潰せます。

Webサイトで見たことあるネタも、新聞の切り抜きとして読むとまた違う味わい。

読者のつぶやきを投稿できるコーナーも

他にも、読者のつぶやきコーナー、グッズ販売など、紹介しきれない見どころがたくさん。更に、4月6日(土)は17:00〜スペシャルトークショーとして、社主・UKさんとゲストのシャープさん(シャープ公式X中の人)&本田隆行さん(科学コミュニケーター)の対談もあるそうです。リアルUKさんに会えるチャンス!

トークショーの詳細はこちら

エイプリルフールは終わりましたが、「虚構新聞展」は4月8日(月)まで続きます(4月2日はお休みです)。虚構の世界をリアルで感じたい方は中之島へGO!

UKさんと握手するグッチさん
創刊20周年記念 虚構新聞展
会期:2024年3月27日(水)~4月8日(月) ※4月2日(火)休業
時間:11:00~19:00
会場:Art Beat Cafe NAKANOSHIMA(〒553-0003 大阪市福島区福島1-1-20)
料金:大人(中学生以上) 1,000円 ※小学生以下無料
主催:朝日放送テレビ
イベント公式サイト

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