⸺そのアートは?
うちが独自開発した特殊箔印刷技術「Sプリズムプリント®」を用いた、上田バロンさんとコラボしたアート作品です。印刷物の上に箔を捺すのではなく、箔の上にカラー印刷をのせる手法。その箔を捺す金型に「微細なエンボス(凹凸)模様」を仕込んで、見る角度によって色が変化したり立体感が出るように、光の反射を計算してコントロールしてます。
僕は中学生の時に「父の会社を継ぐ」と決めてから、30歳までずっと現場で印刷機を回していたガチガチの職人上がり。昔は言われた通りに印刷する「普通の印刷屋」だったけど、ツムテンカクってアートイベントの協賛をしたことがきっかけで、大阪のクリエイターから「無茶な印刷の依頼」を受けるようになったんですよ。かなり悩まされたし、全部刷り直し……みたいな失敗もあったけど、その経験から、自ら提案して課題を解決する「プリンティング・ディレクター」を名乗るようになりました。
⸺そのアートのええところを教えてください。
クリエイターからの無茶振りに、自分の技術で応えることができるところ。毎年、何十人ものクリエイターとコラボしてカレンダーを作っているけど、こっちから「こう描いて」とは言わないんですよ。「印刷大喜利」みたいなもんで、作品がドーンと送られてきて「お前ならどうするんや?」と突きつけられる。この「印刷筋トレ」を10年続けてきたから、何投げられても形にする能力がついたんです。
例えば、まつむらまいこさんの絵本『きょうはもうねます』では、「白引き(白インク)」で工夫してる。白が銀の輝きを隠蔽するというか……白の濃度を調整することで、100%から0%まで「光のグラデーション」が自由に作れるんですよ。今までの印刷にはなかった輝きだと思います。こうやって「新しい表現ができた」って時はむちゃくちゃ興奮しますね。自分でも「変態やな」と思います(笑)
⸺あなたにとってアートとは?
プリズムプリントは、「最高のおもちゃ」ですね。正直、最初の5〜6年はほんまに仕事にならなくて、会社の売上の5%もいかんような状態でした。周りからは「よく続けたな」って言われるけど、俺としてはもう面白くてしゃあないからやってるだけで、「やめる」っていう選択肢がなかった(笑)。面白がって突き詰めた結果、今では大ヒットゲームのカードを数百万枚単位で作るような独占契約にも繋がりました。
30代で鬱状態になったり、不渡りを食らって何千万って売上が飛んだこともあったし、国際的なスポーツイベントの表彰状を作るっていう絶対に失敗が許されない仕事もやらせてもらって……極限の修羅場をいくつも経験してきました。今は何も怖くないですね。デジタル全盛の時代やからこそ、こだわったアウトプットをしたい時に「やっぱりサンクラールやな」と言われるように、印刷で作るアートの価値を上げていきたい。今は倉庫を改装した「FACTORY01」という工房もあって、若いアーティストと一緒に印刷実験をしながら、海外からも人が集まる場所にしたいと思っています。
※掲載時(2026年3月21日)の情報です
取材・文:トミモトリエ







