⸺そのアートは?
イギリスのアーティスト「Dotmaster(ドットマスター)」に描いてもらったグラフィティです。南船場の[Mirriam(ミリアム)]っていうセレクトショップで働いていた頃、オーナーからアートや音楽についていろいろ教えてもらったんです。彼はそのときに知り合って仲良くなったアーティスト。ちょうど[めしやマエケン]のオープン直前に、彼が東京での展示のために来日するタイミングが重なって、僕のためにわざわざ大阪に来て、描いてくれたんです。
⸺そのアートのええところを教えてください。
店に入ってきた瞬間「この壁に描く」って彼に言われたんです。最初は「もっと大きい壁があるのに、なんでこの場所?」って思ったんですけど、夜になると合わせ鏡みたいに反射して入り口のガラスに映るんですよ。それがもう、めちゃめちゃカッコよくて。外からも目立つ場所なので、急遽スポットライトを付けて目立つようにしました。「お前はシェフだから」って、厨房の壁には日替わりのメニューを貼るための枠のデザインも描いてくれて。彼のグラフィティをこんな使い方してるのは僕ぐらいやと思います(笑)。彼のインスピレーションに全てお任せしたんですが、居酒屋に溶け込むアートとしてめっちゃ考えてくれてましたね。「本当なら個人の服には俺は絶対描かない。でもお前はベストフレンドだから」って、僕の服にも描いてもらいました。
⸺あなたにとってアートとは?
僕がこうしてドットマスターと出会えたように、アートは友達と友達がつながるきっかけなのかもしれないですね。僕は、こうして今もボロボロの『KIDS』の服を着てるみたいに、ファッションからアートの世界に興味を持ったんですけど、今の若い世代ってアートと接する機会がそこまでないと思うんです。うちは「ちょっとご飯が美味しいだけの店」にはしたくなくて、アートや新しいカルチャーに触れるきっかけを作りたいんです。カウンターの下にアート系の雑誌も置いてあるんですけど、興味を持ってくれた人とじっくり話をして、アートに触れる入口にもなる店を目指したいですね。
※掲載時(2024年11月15日)の情報です
取材:トミモトリエ
文:関戸ナオヒロ