超生命体の偏愛図鑑

ぎん さん

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彫り師(49歳)
東大阪市在住/広島県出身

目に見えない何かを紐解き、“生きる伝説”たちと街を盛り上げる妖怪ハンター

⸺そのアートは?
僕が描いた「はぢかき(はじっかき)」という妖怪のラグマット。広島から上京する途中、たまたま立ち寄った布施が気に入り、移住して28年。今は、布施の商店街でタトゥースタジオ[elephant tattoo]と、妖怪好きが高じて[ビリビリモンスター]という妖怪専門店を経営しています。僕は妖怪の絵を描く前に、必ずその妖怪発祥の地に行って背景を調べるんです。たとえば、東大阪・石切に伝わる姥ヶ火(うばがび)っていう妖怪。枚岡神社の御神灯の油を盗んでいたおばあさんが身投げして姥ヶ池(うばがいけ)に身投げして妖怪になったと言われているけど、現地に行くと実際は殺されたって話もあって。妖怪のことを深く知った上で、その姿になるまでの仮説を立てて描くのが楽しいですね。

⸺そのアートのええところを教えてください。
はぢかきは常に恥ずかしがってる、ただ恥をかくだけの妖怪(笑)。とにかく見た目が可愛らしい。毎年秋に布施商店街で「妖怪あつめ」というイベントを開催してるんですけど、妖怪の中でも可愛くて子供たちに人気なので、ポスターにも使用しています。子供たちや親御さんの口コミが年々広がり、2022年には3,000人もの人が布施の街に来てくれました。

⸺あなたにとってアートとは?
もともと「目に見えない何か」が好きなんです。宗教の対象とか、物に宿る精霊とか。妖怪もそうで、目に見えないものをキャラクター、アートに変換しています。布施の商店街に暮らす人たちにも同じものを感じます。目に見えないけど、江戸時代からたしかに息づいてきた特有のものが存在してるんですよね。2023年からはコギトケミカルの加藤くんと一緒に、個性豊かな布施の人たちをモデルにした、妖怪フィギュアのガチャガチャを始めました。これからも「生きる妖怪」たちと一緒にこの街を盛り上げていきたいですね。

※掲載時(2024年9月18日)の情報です
取材・撮影:トミモトリエ・オカジマアヤノ