6歳から80代まで、登場人物全員案内人。布施商店街1泊ツアー[前編]

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しまだあや

ツッコミ

大阪蛇行案内、今回は大阪・布施。商店街の中にある[セカイホテル]をお宿に、1泊2日で[おぼこ飯店]、[三ツ矢蒲鉾本舗]、[よしひろ]、[戎湯]、[池田屋珈琲]の5箇所を……の予定でしたが、次々と現れる案内人達に、筆者の好奇心の散漫さが相まって、全16箇所という蛇行っぷり!

ということで、前編・後編と分けました。どうぞ、一緒に案内される気分で、最後までお楽しみください。

あっ。でも本編に進む前にひとつお知らせ。

この記事、実は2021年11月のエピソードなんです。当時書いたものの、風邪のような何かをこじらせずっと眠っていた「布施.doc」。データ整理中に「こりゃ公開したほうがええわ!」となり、覚醒させました。登場する人々やお店たちは、2023年現在も変わらずなのでご安心を。

それでは、いってらっしゃい!!

案内される人&筆者
しまだあや
関西拠点、フリーのエッセイスト。ソーシャルデザインに10年間取り組んだのち、独立し、作家活動スタート。その他、企画から司会まで、なんでもやりたがる。感受性が爆発しすぎて、取材時にすぐ泣く。家の94%を開放するという変わった暮らし方をしている。得意技は愛すること。
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こんにちは、しまだあやです。

大阪で生まれ育った私ですが、いや〜まさか。布施に「商店街に寝泊まりしながら、そこの日常生活を体験できるまち」があるとは。しかも、この「大阪蛇行案内」のシリーズ、基本的にはそのまちに詳しい案内人をお呼びして、いろいろ紹介してもらうっていう流れなんだけど、今回はですね、呼んでおりません。

なぜならこのまち、商店街の人たちがもはや案内人だから。

ということで、やってまいりました! 布施「二条通り商店会」。

ただいまの時刻は13時。おなかがすいています。いつもならGoogleマップ見ちゃったりするけど、今日は見ません。歩いていると早速、気になる看板を発見。

これ持論なんですけど、看板に市外局番ナシの電話番号が書いてあるところは、だいたいええ店。入りまーす。

メニュー、全部おいしそうだけど、「カレー炒飯」と「カレー飯」ってのが気になった。どう違うんだろう。知りたいので、2つ頼む。

手前がカレー炒飯、奥がカレー飯。うますぎて、どっちもぺろりでした。

ちなみに、あとから有識者に聞くと、「上陸して一発目におぼこ飯店の『カレー炒飯とカレー飯』は上級者チョイス」とのこと。やったー。

おなかもいい感じになったところで、気になるDVD屋を発見。これ持論なんですけど、宅急便取扱店の看板があるところは、きっといい店。

ほら、やばいやばいやばい。『デスノート』のスピンオフ映画『L change the WorLd』が100円。

3枚ほどお買い上げました。

さ、次へ。商店街をずんずん進みます。

かまぼこのいい匂いがする〜。「三ツ矢蒲鉾本舗」だって。

お店の中には、小学生くらいのお子さんが。これ持論なんですけど、子どもさんも一緒にお店屋さんしてるところは、だいたいええ店。

しまだあや:こんにちはー。おすすめは何ですか?

かまぼこ屋さん:「枝豆天」とか「じゃがいも天」が人気ですかね〜。

あやめちゃん:あやめは「こざくら」と「いそべまき」!あと今、「たまねぎボール」ができたてやねんで!

しまだあや:じゃあそれ、全部ください〜。

あやめちゃん:640円でーす。

しまだあや:おお、ありがとうございます。レジできるんや。

あやめちゃん:そうやで。最近は式も書けるねん。見て。

そんな感じで、かまぼこ屋の看板娘・あやめちゃんと喋っていると、今日泊まるホテルのチェックインの時間に。

しまだあや:今日私、[セカイホテル]ってところ泊まるんだけど、知ってる?

あやめちゃん:うん! めっちゃ仲良し! 案内したろか?

しまだあや:え、まじで?

「かまぼこ屋」から「案内人」に変身するあやめちゃん。

あやめちゃん:ここやで〜。

しまだあや:「婦人服 キヨシマ」って書いてるで。

あやめちゃん:うん。でもここやで〜。

しまだあや:あやめちゃん今日、何時までお店おるん? このまちのこと、ちょっといろいろ教えてほしい〜。

あやめちゃん:今日はもうすぐ帰っちゃう。明日は?

しまだあや:おお、じゃあ明日ぜひ。

あやめちゃん:おっけー。8時くらい?

しまだあや:8時か、起きれるかな〜。

あやめちゃん:起こしに来たろか? あやめ、朝強いねん。

しまだあや:え?!(笑) う、うん、じゃあよろしく……??

セカイホテルさんのチェックインを済ませて、ここからはスタッフのまりさんが案内人に。

まりさん:じゃあ、お部屋をご案内しますね。外に出ましょう。

しまだあや:えっ、ここじゃないの?

まりさん:はい、しまださんのお部屋はここから3分ほど歩いたところにご用意してます。

ふーん。別館みたいなのがあるのかな。ということで、商店街を歩く。

まちの人1:お、まりちゃん。お客さん?

まりさん:はい、今日お泊まりなんです〜。しまださん、こちらの方はここで居酒屋さんをされてるんです。

まちの人1:そうそう。よかったら覗いて〜。

まちの人2:おっ、まりちゃんお疲れ! えらい今日は忙しそうやな。

まりさん:いえいえ、おかげ様で〜!

まりさんすごいなー。歩くたび、いろんな人に声をかけられてる。しかも、私のことも相手に紹介してくれるから、あとからお店に顔出しやすそう。

まりさん:到着です。こちらがしまださんのお部屋です。

しまだあや:え、ここですか! ほんまに商店街の中や。

まりさん:ここは昔、和菓子屋さんだったんです。上の看板はそのまま残ってますよ。

しまだあや:ほんとだ!

まりさん:お隣は別のお部屋なんですけど、そこは元・接骨院です。

しまだあや:フロントは「婦人服」って書いてたね。

まりさん:そうなんです。ホテルっていうと、建物の中にレストランや大浴場があったりしますけど、うちは、このまちの人たちに協力していただいて、その役割を商店街やその周辺においてるんです。朝食会場はそこの喫茶店、大浴場はあっちの銭湯へ……という感じで。

しまだあや:ひあ〜〜、すげーー。商店街がまるごとホテルなのか。

まりさん:夕食会場もお選びいただけるんですが、気になるお店はありましたか?

しまだあや:いや〜、めっちゃ迷ってます。おいしそうな店が多すぎて。あれも食べたい、これも食べたい……ってなっちゃう。

まりさん:ふふ、そうですよね。「あれもこれも」ってなっちゃう人向けの、おすすめのところ、ありますよ。[よしひろ]っていうお好み焼屋さんです。

ということで、 来ました。お好み焼・鉄板焼の[よしひろ]!

メニューを開くと、お好み焼と鉄板焼の種類の多さはもちろん、カレードリア、チーズフォンデュ、ミーゴレンやガレットまである。「ほんまにここはお好み焼き屋さんなの?」ってなる。

しかも、[セカイホテル]の宿泊者だと、ちょっとずついろんなものを食べられるコースも。「あれもこれもってなっちゃう人向けのおすすめ」って、そういうことか。

左がミーゴレン、右が豚玉。鉄板の上で、ボーダレスになる世界。ビールが進む〜。

あと、さっきからこれが気になる。「100円占い」だって。やってみよ。

「吉」だ〜、うれしい。「玉の輿に乗りやすい」「お見合い結婚が向いてる」「ヨーロッパへ行け」「風邪には気をつけろ」って書いてる。

あーおいしかった! もう一軒くらい、行きたいな〜。と、その前に。こういうまちの商店街に来たときにゃ、私はチェーンじゃない薬局に必ず寄りたい。なぜなら。

じゃーーん。ロールじゃないタイプのトイレットペーパー! これ、街やお店によって取り扱ってるメーカーが違うんだけど、どれもデザインが素敵で。かさばるけど、新種を見つけるとつい買ってしまう。

しまだあや:レジお願いします〜。

薬局のおじさん:はーい。えらい珍しいもん買うんやなあ。

しまだあや:旅先の薬局で見つけたときには、必ずおみやげに買うんです。

薬局のおじさん:なんで??(笑) まあ、ええけど。遠くから来たの?

しまだあや:いえ。奈良なんで近いです。でも、大阪に行くときいつも通るまちやのに、ちゃんと巡ったことないな〜と思って。

薬局のおじさん:なるほどね。布施、どう?

しまだあや:楽しいです! くいだおれの街より、食い倒れそう。

薬局のおじさん:布施で遊ぶなら、これがええお供になるわ。試してみ。

薬局を出ると、ちょうど向かいに人が集まってる。

みかん屋さん:みかん特売だよ〜。もうすぐ店じまいだから、味見だけでもどうぞ。

しまだあや:デザートや。食べたい食べたい。

後ろで、自転車の止まる音。「あっ、みかんだ!」「買って帰ろ〜」自転車で布施に来れる距離にいるの、うらやましいな。ラフな格好だし、このあたりに住んでる人かな? ちょっと聞いてみよ。

しまだあや:あの〜、すみません。今このへん巡ってて。近場でサクッと飲める場所、おすすめないですか? ほんとに地元の人が行くような。

お姉さん:立ち飲みでも大丈夫な感じですか?

しまだあや:はい。

お姉さん:じゃあ、ここ曲がってすぐのところに角打ちがありますよ。

しまだあや:いいですね〜! ありがとうございます。

と、ほんの1分ほどで到着、[三笠屋酒店]です。

お客さん1:見ない顔やな! どっから来たん。

しまだあや:奈良です、お邪魔します〜。そこのセカイホテルに泊まってて。

お客さん1:あー、あそこね! いつまでおるか知らんけど、[紀の国屋]のコロッケは食べて帰りよ。

お客さん2:俺はそこの肉屋、[まるとよ]のコロッケが好きやわ。

しまだあや:ここ来るときに通った商店街のお肉屋さんかな?

お客さん1:そこは[やまじん]やな。そこもうまいし、有名やで! 食べ比べしてみ。

お客さん2:駅前の[モモヤ]のフルーツ大福は食べた?

しまだあや:え、まだです!

お客さん1:あそこ、でっかい柿のまんじゅうも名物やで。柿のかたちしてるけど、柿は入ってへんねん。

しまだあや:へー! 気になる!!

お客さん2:あー、でもあかんわ。モモヤ、明日定休日ちゃうかな。

しまだあや:ざんねん……!

三笠屋のおばちゃん:リアルな柿でよければ、ここにあるわよ。今日お客さんにおすそ分けしてもらったんだけど、たくさんあるから。

しまだあや:えー! やったーー!!!

「そこのセカイホテルに泊まってて」というセリフが、まちの人からいろんなおすすめを案内してもらえる合言葉みたいになってる。楽しいな〜、明日も来たいくらい。

お客さん1:お! 俺らたぶん、明日もおるわ。昼間来て、夜もまた来るときあるもんな。

みんなに「また明日待ってるで〜」と見送られながらの帰り道。シャッターが閉まっていくお店達を横目に、同じ並びにある自分の部屋へ戻る。

新鮮だったのは、閉店作業中のお店の人達に、自然と「おやすみなさい」と声をかけている自分がいたこと。そして、それに対して「お! おやすみ〜」と返してもらえること。

ま、今日だけでもこの商店街、3回以上は往復したもんな(笑)、ちょっとだけ顔を覚えてもらえたのかも。それでも、住んでいるまちでもないのに「また明日」「おやすみ」、なんかそれってすごいことよな〜。

ということで、おやすみなさーーい。

後編に続きます。

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