こんにちは、トミモトリエです。
『ヘンとネン』では、80歳以上の店主が営む喫茶店を巡る連載「冷コーと温故」を執筆中ですが、連載第1回目で紹介した喫茶店も既に閉店したり外装が変わったり……刻々と状況が変化しています。
ということで、今回の「大阪蛇行案内」は、埼玉県の鳩山ニュータウンで活動する、昭和レトロアーティストの菅沼朋香さんをゲストに、早く行かないと後悔する「生きた昭和遺産」としての純喫茶を一気にご案内。
とはいえ、ポイントを絞らないと移動が大変なので、今回は「チン電で巡る大阪ディープ純喫茶ツアー」と題して、チンチン電車こと「阪堺電車」沿線の駅に絞ってご紹介します。
案内される人
蛇行ダイジェスト
トミモト
ようこそ、大阪へ。菅沼さんとは「マニアフェスタ Vol.7 in ニコニコ超会議2023」で出会って、大阪の昭和レトロ喫茶を案内するという約束をしたんですよね。
マニアフェスタの話は「ちゃんとちゃんとしないラジオ」で聴けます
菅沼朋香
大阪は何回も来てるんですが、喫茶店は[アメリカン]とか[マヅラ]とか超有名どころしか行ったことなくて。高度成長期をテーマに作品を作るようになったのも、名古屋の神宮前にある[ロアール]っていう純喫茶を訪れたことがきっかけなんです。効率化とは程遠いインテリアの工夫がたくさんあって、右肩上がりの時代の「未来への希望」を感じる、高度成長期に作られたデザインが大好きで……。
トミモト
わかります!! 高度経済成長期、特に大阪万博があった1970年代の建築って「いい無駄」が多くて、熱量が高い。菅沼さんは、自宅で昭和レトロをテーマにしたコミュニティカフェも運営してるんですよね。
菅沼朋香
今は埼玉県比企郡鳩山町の「鳩山ニュータウン」※に移住して、超高齢ニュータウンのまちおこしプロジェクトに参画しています。元空家の自宅を改装したサイケデリックカフェ「ニュー喫茶幻」を運営しながら、昭和レトロなライフスタイルをYouTubeで発信したり、空家の庭に実っているフルーツで焼き菓子を作る「
空家スイーツ」を販売したり。
※鳩山ニュータウンは、65歳以上の高齢化率は約52%(2019年時点)、空き家は100戸以上という超高齢化タウン。
トミモト
そんな菅沼さんを案内したい喫茶店がたくさんあるんですよ!!!
恵比須町:新世界の老舗ブラザーの芸術的なレスカ
トミモト
まずはこちら。新世界の喫茶店といえば[ドレミ]が有名ですが、新世界で一番古い[ブラザー]もおすすめ。昭和レトロマニアはたまらない店だと思います!
菅沼朋香
ドレミは行ったことあるけど、ここは知らなかった……。
菅沼朋香
ショーケースとか、ドアガラスのシールがたまらないですね……。
菅沼朋香
うわぁ〜。ガチの昭和レトロ空間ですね。天井が歴史を物語ってる……。壁もちょっと珍しいパターン。
トミモト
この店で注文してほしいのは「レスカ」ことレモンスカッシュ! あと、新世界といえばやっぱり「ミックスジュース」ですね。
菅沼朋香
えーーー! レモンの切り方が芸術的……。かわいい〜!
トミモト
生レモンがたっぷり絞られてます。まずはそのまま飲んで、後からシロップを足して調整してみて。
菅沼朋香
これは目が覚めますね(笑)。朝の眠気覚ましにコーヒーじゃなくてレスカも正解かも!
菅沼朋香
んー、ミックスジュースも美味しい! バナナと……桃の味もする? 何が入ってるのかわからないけど、まろやかでやさしい味。
トミモト
ミックスジュースは店によって味が違うので、大阪に来たら色々飲み比べてほしい。
菅沼朋香
それにしても、マスターが素敵すぎる……。
トミモト
今のマスターは二代目で、元々はマスターのお母さんとその弟さんが姉弟ではじめた店らしいです。
開店当初は、酒類も提供する「カフェー」として営業していたが、現マスターが高校生になる頃に、お酒の提供をやめて「純喫茶」の形態になったとのこと。
1日600円で乗り放題!チンチン電車で堺市方面に南下
今日は「チン電で巡る大阪ディープ純喫茶ツアー」ということで、チンチン電車「阪堺電車」に乗って大阪市から堺市まで南下します!
ここで重要ポイント!! 阪堺電車は、距離にかかわらず乗車1回230円(小児120円)という料金設定なんですが、600円(小児300円)で全区間1日乗り放題の「てくてくきっぷ」というチケットがあるんです。
天王寺駅前・我孫子道・浜寺駅前の各乗車券発売所で販売していますが、乗車時に運転手さんから購入することもできます。
詳しくは阪堺電車のホームページで
※もうひとつ、「RYDE PASS」というアプリから購入できる「トリップチケット」もあるらしい(こちらは更に特典付き)
トミモト
そうなんです。3回乗れば元が取れるので、途中下車するなら「てくてくきっぷ」の方がお得なんですよ。
トミモト
ここで残念なお知らせがありまして。2軒目に行く予定だった住吉の[喫茶タンポポ]が休業してるみたいで。
菅沼朋香
うわー、残念。一番楽しみにしてました(涙)
トミモト
すみません。過去に私が行った時の写真を見てください……。
オレンジ色の装飾テントを電車の中から遠目で確認しながら住吉を通り過ぎ……次の目的地高須神社へ。
高須神社:年季の入り具合がレベチな喫茶ラックの絶品卵サンド
菅沼朋香
嘘みたい。年季ってレベルじゃない……。本当に営業してるの?
トミモト
営業してます。ドアを開けてみてください。
トミモト
お昼ごはんに「たまごサンド」を食べましょう。
菅沼朋香
わーー!! 美味しそう。思ったよりめちゃくちゃ多い。
トミモト
2人でシェアしてちょうどいいくらいなんですよ。
トミモト
信じられないでしょう……? しかもめちゃくちゃ美味いんですよ!
菅沼朋香
美味し過ぎます!!!! ふわっふわでジューシー。マヨネーズの味もしっかりしてる。幸せ。関東のたまごサンドと違いますよね。
トミモト
そう、たまごサラダのたまごサンドではなく、厚焼きたまごなんですよねー。
菅沼朋香
あっ! たまご焼きがジューシーすぎて服に汁が垂れたんですけど(笑)
菅沼朋香
アイスティーのグラスも底がお花になっててめちゃくちゃかわいい〜。
大小路:96歳現役マスター!喫茶フレンドの愛す・コーヒ
トミモト
正直、営業しているか定かではなかったんですが、「OPEN」になってますね。
トミモト
よく見ると、奥のカウンターは電気ついてます。とりあえず入ってみましょう。
菅沼朋香
壁の装飾が素敵すぎます。青い絨毯も白いレザーチェアも……どの角度から見ても最高。
トミモト
なんと、こちらは96歳のマスターが昭和42年の創業から現役で続けられているんです。
トミモト
壁のメニューにある「愛す・コーヒ」を注文しましょう。
菅沼朋香
ネーミングセンスが愛しい……。でも、その上にある能面の絵が気になりすぎてメニューが入ってこない(笑)
トミモト
確かに、どうしても能面が目に入ってきますね(笑)
菅沼朋香
濃くて甘いコーヒー。愛情の濃さを感じます。
トミモト
創業56年の深みとマスターの愛嬌がたまらんですね。
店内にたくさん飾られてるピエロの人形はマスターの兄弟が送ってくれたものだそう。今も、日曜・祝日以外は毎日店を開けているというマスター。すごすぎます。
寺地町:MUCとの関係は……?クラシカルでメルヘンなスコーレ
トミモト
2つ先の寺地町にある[スコーレ]にやってきました。
菅沼朋香
メルヘンで上品〜。そして、電気がついてると安心します。
トミモト
看板の上のパトランプも光ってるし、今回は遠目でも営業してることがわかりましたね(笑)
菅沼朋香
ドアを開けるまでの前庭で世界観に引き込まれます。
トミモト
ここはカップもクラシカルで素敵なので、ホットコーヒーとホットティーを注文しましょう。
トミモト
ここは、昔から大阪の老舗コーヒーロースター「MUC(上島珈琲貿易)」のコーヒーを仕入れているそうです。
菅沼朋香
BGMもクラシックですね。落ち着きます。
菅沼朋香
このタイプの椅子はよくあるけど、色と柄が珍しい。ステンドグラスも素敵。奥のカウンター席はよりクラシックな雰囲気ですね。
トミモト
そうなんですよ。奥のカウンターと椅子は、同じ堺市に本社があるフランチャイズ[珈琲専門店MUC]とそっくり。というか、椅子は多分同じ(MUCと違って固定されていないバージョン)です。
確認したところ、昔からの付き合いで、壁のプレートと椅子は閉店した[珈琲専門店MUC]の店舗から引き継いだものなんだそうです。
北天下茶屋:折り返して昭和レトロ喫茶の聖地へ
トミモト
既にご満悦の様子ですが、寺地町から折り返して、最後は「北天下茶屋」に行きます。
ここからはサクサクと外観だけ紹介していきます。
トミモト
今は16:00を過ぎているのでもう閉まっていますが、北天下茶屋駅すぐ近くというかホーム直結の[コーヒールンバ]はモーニングが充実していて、10種類から選べるんですよ。
過去の写真
トミモト
そして、すぐ近くにもうひとつ最高な喫茶店があるんですよ。
菅沼朋香
外観から良さそうな雰囲気が滲み出てます。
トミモト
大阪発の喫茶店としてかなり有名な[丸福珈琲店]から暖簾分けした店で、内装もショーケースに飾られているコーヒーカップも素敵なんです。個人的にめちゃくちゃお気に入りの店です。今日は時間がないので次の機会にぜひ。
過去の写真
おまけ
チンチン電車での純喫茶巡りは終了。北天下茶屋から西天下茶屋方面を案内したついでに、最後にもう1軒、最後のおまけです。
ここまで来たら行くしかないでしょう、あそこに!
おまけ:最終兵器……マル屋を浴びてほしい
トミモト
「メニューが解読不能な古文書」でおなじみ、破壊力高めな昭和遺産[コーヒーショップ マル屋]です。確か今年で創業88年のはず。
トミモト
覚悟してください。私はもう5〜6回来てますが、何度来ても入る瞬間は緊張します。異世界への入口を通る感覚です。
トミモト
ちなみに、席に座ると間髪入れずに「何にしましょー」って注文を聞かれるので、じっくりメニューを解読している時間はないです。ここではパフェを食べましょう。あと、キャッシュオン制なので机の上にお代を出しておくのがスマートです。
菅沼朋香
かわいい〜! って、これ、200円って本気ですか?
菅沼朋香
フルーツまで乗ってますよ? うん、美味しい〜。
トミモト
他にも、ホットコーヒーは160円、クリームソーダが140円、バナナジュースは100円という値段設定です。
菅沼朋香
本当に古文書ですね。印刷し直すことなくこのまま使い続けるところに強い意思を感じます。付け加えられたメニューや価格の訂正が多すぎて解読が難しい……。
トミモト
訂正前の価格を見ると、昔はチョコレートパフェが400円だったんですよ。それが200円になってる。天丼なんて720円が290円になってる。値上がりしたのかと思ったら、メニューの風化と共に安くなってるんです。価格破壊ってレベルじゃない。
菅沼朋香
案内してもらわないと絶対辿りつかない店ばかりでした。いやー、全部幻だったんじゃないか? って感じです(笑)
トミモト
本当に幻になってしまうかもしれないですからね。
菅沼朋香
「また次」はないかもしれない……。今日行けなかったお店も早く行かなきゃ!と思います。
おまけ