⸺その店は?
週に1回、木曜日だけ営業してる、僕の趣味と実益と夢を詰め込んだおもちゃ屋です。
もともとバンドをやってて「売れるぞ!」って息巻いて上京したんですけど、コロナでライブができなくなって2021年に地元へ帰ってきたんです。元々平成のおもちゃを集めるのが趣味だったんですけど、親子三代古物商の家系なのもあって、ダメ元でリサイクルショップをやってみようと。最初はネット販売メインで、倉庫として借りたのが元鶏肉屋のこの物件。そのうち、木曜日が燃えるゴミの日でゴミ出しのために絶対ここに来るから、その日だけ店を開けてみようって店舗としても営業するようになって1年くらい。他の日は基本買取に行ってます。
⸺その店のええところを教えてください。
「平成の友達の家」に遊びに来たような感覚になれるところですね。
靴を脱いでもらうんで、お客さんみんな「失礼します」って言って上がってくるんです。店なのに(笑)。置いてあるのは、僕と同世代(平成3年生まれ)が泣いて喜ぶポケモンやデジモン、当時の素材感がたまらないソフビなんかのアナログなおもちゃたち。
あえて、子どもの頃使ってた学習机も置いてます。友達の家に行って、机の引き出しを勝手に開けて怒られる…みたいな経験あるでしょ?その「友達の机の引き出しを開けてみたい願望」を叶えるために、引き出しの中に商品を入れてます。
あと、商品に値札は付けないスタイル。大手のリサイクルショップみたいな「客対スタッフ」じゃなくて、昔の商店街にあった「店のおっちゃんと客」みたいな人間関係で売りたいから。相手によって値段も変えます。お小遣い握りしめてくる近所の小学生には「ジュース1本分でええよ」って安くしたり。ただ、今時の子どもだちはヒロアカとかチェンソーマンとか求めて来るんで、「うちにはないで」って言うとがっかりして帰る。まあ、お父さんとかお母さんが喜ぶ店って感じですね。
⸺あなたにとって店とは?
強いて言うなら、この店は「新しく生まれた絶滅危惧種」ですかね。
よく、「本業は何やってるんですか?」って聞かれるんですよ。今の時代、週1しか開けない田舎の個人店で生きてるなんて「ありえへん」って驚かれる。昭和の個人経営の商店のスタイルを平成のアイテムでやってる、令和の店。わけわかんないでしょ?
昔は個人経営の本屋とか駄菓子屋とかこの辺にたくさんあったけど、全部なくなってしまった。ここが子どもたちの喋り場になったり、大人が童心に帰れる場所になれたらおもろいなって。都心では成り立たないビジネスなんですよ。こんな値段でやってたらあっという間に買い尽くされてしまうし、家賃高いからちゃんと売らないといけなくなる。
大人になると「おもちゃなんて」って捨てさせられたりするけど、もしコレクションを手放さなきゃいけなくなったり、実家の掃除とかで懐かしいおもちゃが出てきたりしたら、捨てる前に真っ先に僕の顔を思い出してほしいですね。何より商品を確保することが大変なので、買いにくるより、売りに来てくれたら嬉しい。この絶滅危惧種を保護すると思って、ぜひ(笑)
※取材時(2025年11月22日)の情報です
取材・撮影:トミモトリエ







