超生命体の偏愛図鑑

上田幸美 さん

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提灯印入業(図研むしまつ)/47歳
福島区在住/三重県志摩市出身

街に明かりを灯す仕事の裏側に、路地裏で愛される黒猫の存在あり

⸺そのペットは?
メスの黒猫、むーちゃんです。生後2ヶ月で実家の知り合いから譲り受けて7年くらい。だから私とは同郷です。むーちゃんを飼おうか悩んでいた当時、家にはすでに先住猫のふーちゃんがいて、夫から「愛は2つに分けられない」と反対されましたが、どうにか野田に連れてきました。ふーちゃんは、そのときすでに20歳超えのおばあちゃん猫。ご老体にリスペクトを込めて、五十音で「ふ」よりあとに来る「むーちゃん」と名づけたんです。ふーちゃんからすれば、生後間もない新参者ははしゃぎすぎに映ったみたい。でも、いつしか背中合わせで暖を取る関係になっていました。目は合わさへんかったけど(笑)

⸺そのペットのええところを教えてください。
同じ長屋に暮らすご近所さんにかわいがられているところです。基本的に臆病なむーちゃんも、よく顔を合わすおじいちゃんやおばあちゃんには気を許していて、たまに表であいさつすることもあって。私自身は提灯の絵付けや献立表の文字書きを仕事にしていますが、提灯の納入業者さんともフレンドリーです。もうひとつは食べる、寝るという猫にとっての最重要案件をクリアするために必要な行動を、しっかり心得ているところ。作業中は背もたれのない椅子の前半分に腰掛けるんですが、余ったスペースにやってきて背中を引っかいてくる。空腹の意思表示ですね。おかげでTシャツの背中はボロボロなのが多い(笑)。大型の提灯を保管していると上下の穴から入り込んで休もうとするので、納品されると間髪入れずに周りのものでふたしています。

⸺あなたにとってペットとは?
この子のために働こうというモチベーションを与えてくれる存在です。世話をしないといけないぶん深酒もしなくなって、彼女の成長にも目が向くようになりました。猫って毛布をふみふみするじゃないですか。むーちゃんも最初はただふみふみするだけだったのが、まず毛布を甘噛みしてからふみふみして、最後はキックで締める。そんな独自スタイルを確立させたのも見逃しませんでした。あとは言葉を持たない猫を相手にしてきた結果、他人の些細な言動にイライラすることが減ったのもありがたい。いや、これは単に自分が歳を重ねたせいかもしれへんな(笑)

※掲載時(2024年4月30日)の情報です
取材・撮影:関根デッカオ