⸺その楽器は?
YAMAHAのピアニカ(P-37D)です。10代の頃からキーボーディストとして活動していて、鍵盤ハーモニカはサブで使う程度やったんです。でも、30歳の時にたまたま小学校で演奏をする機会があって。その時に「音楽が苦手と答える小学生が7割いる」とか「鍵盤ハーモニカは人気がない」って話を先生から聞いて、こらアカンな……と。「子どもにとって一番身近な楽器である鍵盤ハーモニカを極めて、みんなが憧れる楽器にしたい!」と決意、今までやってたことを全部やめて、ピアニカの魔術師としての活動をはじめました。それから年間250回くらい小学校でライブしてます。
⸺その楽器のええところを教えてください。
鍵盤ハーモニカって表現豊かで立派な楽器なのに、プロを目指す人ってほとんどいなかったんです。ダブルタンギングやビブラート、鍵盤を浅く押すことでピッチベンド(ピッチを滑らかに変化させること)もできるし、呼吸を使う鍵盤楽器として幅広い奏法がある。でも、それって教科書に載ってないんです。僕はサックスのストラップを使って両手で弾くんですが、普通は左手で持って右手で弾くものって固定観念があるから、「こんな風に演奏できるんだ」「こんな音出るんだ」って驚かれる。簡単に持ち運べて、いつでもどこでも演奏できるのもいいところですね。ちなみに、愛用してるピアニカケースは、ファンの小学生のおばあちゃんが作ってくれたもの。お気に入りです。
⸺あなたにとって楽器とは?
もう、身体の一部やな(笑)。ピアニカは、僕の身体とようやく一体化してくれた楽器。死ぬまでやめられないです。僕のライブを見て真似する子どもたちが増えて、小中学生のピアニカ奏者が育ってきてるんですよ。最近は小学校の先生の先生もしてるんですが、マニュアル通りではなく、感覚的に弾けるようになる方法を伝授してます。楽器に正しい使い方なんてないと思っていて。音楽ってもっと自由で、演奏する人によって違っていい。難しく考えず、とにかく楽しんでほしいですね。
※掲載時(2023年10月23日)の情報です
取材・撮影:トミモトリエ