超生命体の偏愛図鑑

金城昌秀 さん

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愛はズボーン ギター・ボーカル(35歳)
大正区出身/住吉区在住

エフェクターは「遊戯王カード」。男子の夢が詰まったおもちゃのような仕事道具

⸺そのガジェットは?
1978年の登場以来、ギタリストに愛され続けているディストーションエフェクター「RAT(ラット)」です。僕、エフェクターという存在そのものが好きなんですよ。音だけじゃなく、形とか、歴史も含めて。
例えば、デザイン的に一番好きなのは「チューブスクリーマー」の「ナイン(TS9)」って呼ばれている機種。あの緑に銀のカラーリングも最高だけど、名前がいいんですよ。チューブ(真空管)に必要以上の圧をかけて、無理やり叫ばせる(スクリームさせる)ことで歪んだ音を作る……という由来があると言われていて。RATも「なんでネズミなんだ?」って調べると「開発されていた地下室がネズミの巣窟だった」みたいな逸話が出てきて、深掘りするのが楽しい。
バンドでは僕がリーダーであり音作りのマニアックなところを担当していて、他のメンバーが退屈するような細かい作業も、僕はずっとやってられるタイプ。オタク気質なんです。

⸺そのガジェットのええところを教えてください。
「遊戯王カード」と同じで、自分だけのコンボを見つけられるところですね。
僕、昔から遊戯王が好きで、カードゲームって、AとBのカードを組み合わせたら強いとか、順番を変えたら効果が変わるとかあるじゃないですか。エフェクターも全く一緒なんです。「RAT」というカードに、別の機械を組み合わせたらどんな音が鳴るか。繋ぐ順番を変えたらどうなるか。人がまだ見つけていない「俺だけの最強コンボ」を探すのが無限に楽しいんです。あと、単純に「男の子の夢」が詰まってますよね。つまみがあって、英語でメモリが書いてあって、スイッチを踏むと光る。このコックピット感がたまらない。他人の足元のボードを見ると、「この人はこの並びにしてるのか、性格出てるな」って診断できるくらい、その人の人間性が詰まっている場所だと思います。

⸺あなたにとってガジェットとは?
仕事の道具やのに、夢が詰まってるおもちゃ。仕事の道具ってパソコンみたいに効率的であるべきじゃないですか。でもエフェクターには、デカくて重かったり、装飾があったりと、「夢」と「無駄」が詰まっている。高いし、客席からは誰も見てないし、完全に自己満足の世界なんですけど。
僕らの音楽は、言ってみれば「ポジティブパンク」。反骨的なメッセージもあるけど、最終的にはポジティブなエネルギーで包み込みたい。そのために、ジャキッとしたギター、真ん中を支えるギター、土台のベース、それを包むドラム……と、音の「ルーム感(小さな部屋のような音の響きを再現する効果)」をすごく大事にしてます。
僕は絵を描いたり映像編集もするので「視覚情報」の強さはわかってるつもりなんですけど、だからこそ目に見えない音に、無意識に訴えかける「違和感」や「こだわり」をどう忍ばせるか。それを実現してくれるのが、この機械たちなんです。

※取材時(2025年11月22日)の情報です
取材・撮影:トミモトリエ