超生命体の偏愛図鑑

yana さん

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地域似顔絵師・設計士(27歳)
大阪市在住/三重県伊勢市出身

よき“けんか相手”との対話を通して地域の似顔絵を描く

⸺その文房具は?
ドイツの筆記具メーカー・ロットリングの製図ペン「イソグラフ」です。建築科で学んだ高校時代に製図の授業で出会い、もう12年の付き合いになります。大学、大学院と進んで現在は建築の世界で働いていますが、図面を引く作業はCADが当たり前。それでも、自分の手を動かして描く作業は継続したいと思い、プライベートではイソグラフを使って、鳥瞰図的な表現に街の見どころを盛り込んだ「地域似顔絵」の制作に取り組むようになりました。これまでには生まれ育った伊勢、社会人1年目に暮らした四條畷、さらには空堀、長野の善通寺、愛媛の西条などを題材に作品をつくっています。

⸺その文房具のええところを教えてください。
インクの出がよくて、シャープな線が引けるのはイソグラフならではと思います。メインで使っているものは、線の太さが0.13ミリ。大ぶりな作品でも細かく線を描き込んでいくスタイルの私にしてみれば、画面が「汚れる」ことのないこの上ない道具です。一方でインクの交換や定期的な清掃など手間がかかりますが、こうしたメンテナンスは自らの作品を客観視させてくれる大切な時間。いったん絵から離れる必要があることで「ここをもっとこうしよう」というアイデアが湧いてくるのは、アナログな道具ゆえだと思います。万年筆のようにインクを補充して使うので、なかには10年選手も。時代の流れで廃番品も多くなってきたので、メルカリで探してくることもしばしばです。

⸺あなたにとって文房具とは?
よき「けんか相手」です。頭のなかに「こう描きたい」というイメージがあっても、細いペン先がそう動いてくれるとは限らない。これには自分の力量もあると思うんですけど、イソグラフとの意思疎通なしにいい作品は生まれないと感じています。仲直りの方法ですか? それはもう、自分自身で納得のいく作品ができたときですね(笑)。これからも「けんか」を繰り返しつつ、行く先々での思い出が詰まった地域似顔絵を描くことを通して、全国さまざまな街とつながりを築いていきたいです。

※掲載時(2024年7月17日)の情報です
取材・撮影:関根デッカオ