⸺その本は?
立花隆さんの『サル学の現在』です。
僕は北海道から出てきて、大阪芸大で落語の研究をしたり、ハードコアのドラムからミニマルテクノを経て、今は民族楽器とエレクトロを融合させた音楽を作っています。昔から古代の歴史とか民族学に興味があって、それが自分の表現の源泉になっているんですが……そういう意味で自分にすごく刺激を与えてくれた1冊。
DNAや化石とか、いろんな方向からサルと人間を対比させているんですが、特に面白かったのが「ボノボ」というサルの話。チンパンジーって人間に近くて賢いけど、人間と同じようにすごく残虐な側面もある。でもボノボは違って、めちゃくちゃ平和的なんです。群れ同士が遭遇して緊張が走った時、闘争するんじゃなくて、オスもメスも関係なくみんなで性行為をして、愛し合って乗り越えるという。これって、もしかしたら争いばかりの現代の「人間」に欠けている感覚なんじゃないかと考えさせられました。
⸺その本のええところを教えてください。
サルの生態を人間と照らし合わせた時に、人間のルーツや未来の可能性が見えてくる。こういう研究の本を読むのも、今日来ているこの「河内ドルメン」みたいな古代の遺跡に自ら足を運ぶのも、僕の中では同じ行為なんです。開運したいからパワースポットに行くわけじゃなくて、古代の人が祈りを捧げた空気感とか、彼らが見ていた世界観を感じた時、自分と共鳴してふつふつと湧いてくるものがある。それが、自分の中に「残響音」として残っていますね。
「ブギ丸とでべそ」の曲を作る時は、バンドの衣装とかコンセプト重視で考えたりもするけど、ソロで曲を作る時は何も考えずに鍵盤を触って、出てきた音から自然と自分の中に蓄積された残響音とつながっていく。記憶の風景に「サウンドトラックをつける」感覚です。
⸺あなたにとって本とは?
「心の起源をたどるもの」ですね。
ちなみに僕の「クラゲナス」って名前も、『古事記』の「くらげなす漂へる」っていう、天地が定まる前のフワフワした状態を表す言葉から取ってるんです。根源的な意味合いがありつつ、ナスやクラゲっていう響きも縁起良さそうだし、自分のアンビエントで浮遊感のある世界観に合っているなと。そういう「根っこ」を探るのが好きなんです。
大人になると、子どもの頃のように森の中にアジトを作ったり、純真な目で世界を見たりしなくなってしまう。1stソロアルバム『ピカノスタルジー』では、実家から送ってもらった幼少期のビデオから、僕やいとこが遊んでいる声をサンプリングして入れています。聴く人には伝わらなくても、自分が子ども時代に見ていた風景や世界観の音を取り戻したくて。これからも、そんな心の深層心理にコネクトできるような音楽を作っていきたいですね。
※掲載時(2026年3月21日)の情報です
取材・撮影:トミモトリエ





