超生命体の偏愛図鑑

吉田田タカシ さん

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アトリエe.f.t.代表、教育者、ミュージシャン(47歳)
奈良在住/兵庫県出身

教育の本質は「楽しい」を邪魔をしないこと。命がけで楽しむ大人の背中

⸺そのアートは?
僕のモットーである「たのしいにいのちがけ」をデザインしたポスター。大阪芸術大学在学中に美大受験の予備校として「アトリエe.f.t.」を立ち上げて26年。今は4歳から受講できる「こどもあとりえ」や、高卒資格が取れる「e.f.t.高等部」など、教育者としての活動を広げているんですが、僕がずっと教えているのは「自分のものさしで楽しく生きる」ということなんです。教育の本質は「楽しい」を邪魔をしないこと。更に、大人が楽しみながら活動してる姿を見せることが大事だと思っていて。2022年にはじめたプロジェクト「トーキョーコーヒー」もその一つで、学校に行かないこどもたちを変えるのではなく、大人が楽しく集まれる拠点を作ることで、こどもたちが安心して過ごせる居場所が生まれる。大人の行動や意識の変化を通じて、こどもを取り巻く環境を変えていこうという活動なんです。

⸺そのアートのええところを教えてください。
自分の中で、どんなことも「楽しい」のためにやっているということがブレないように、目で見て再確認しています。生きる上でのコンセプトですね。「アトリエe.f.t.」のe.f.t.は、フランス語の「アンファン・テリブルス」という「恐るべきこどもたち」を意味する言葉から取ったんですけど、若い頃、ずっと大人たちに腹を立ててたんですよ。おっさん大嫌い、クソな社会を作りやがって!と思ってたんですけど、気付いたら自分もその社会を作っている一人になってた。生きてるだけでおっさんになるんや……って、マジでうっかりしていて(笑)。めちゃくちゃ反省してるんです、今。自分がこのままダサいおっさんにならないために、自分が会いたかった「たのしいにいのちがけ」な大人でありたいし、学びたかった学びを作りたいです。

⸺あなたにとってアートとは?
唯一「わからなくていい」って言ってくれる学問だと思います。社会の中で「よくわからないもの」って省かれてきたけど、生産性や合理性がなくても大切なものってたくさんある。それを教えてくれるのがアートなんです。それは教育と一緒で、26年やってきたけど、今だにわからないことだらけ。正しい教育なんていう正解はないんですよ。僕がやっていることは「こうすべき」という新しい教育の提案ではなく、ムードを醸成してるだけなんです。わからないなりに、変えなきゃいけないというムードを作っている。何かが変わる「うねり」を見せつける役割だと思っています。

※掲載時(2025年1月7日)の情報です
取材・文:トミモトリエ