
2026年1月28日(水)〜2月1日(日)、大阪の閉館したホテルで、株式会社人間による、実験的体験型イベント「ホテル 企画天国」が開催されました。
このイベントは、株式会社人間の創業精神である「面白くて 変なことを 考えている」という軸を見つめ直すプロジェクト『株式会社人間15周年企画 背骨』の一つ。思いついた企画をストックしていくブログ「企画天国」の実験場として、ホテルでの実施が実現しました。


ホテル 企画天国の舞台は、ブティックホテル「THE BOLY OSAKA(ザ ボリー オオサカ)」。人間とも所縁ある同ホテルは、ビルの建て替えに伴い、2026年1月18日に閉館。2019年3月の開館以来7年に渡り、「大阪の人たちが自慢したくなるような、大阪らしいホテル」を目指して日本中、世界中から多くのゲストを迎えてきました。

そんな閉館後のホテルに、紙芝居屋、エッセイスト、ゲームデザイナー、劇作家、ダンサー、謎解きクリエイターなど……ジャンル問わず関西中のクリエイターたちが一斉にチェックインし、プランナーとして自由に考えた企画を、全客室・全館にわたって展開。
その中でも、ヘンとネンでは、超生命体たちの部屋をピックアップしてレポートします!
砲丸投げができる部屋

「ドスン」という、ホテルとは思えない鈍い音が聞こえてくる。何事かと思って見に行ってみると、そこは「砲丸投げができる部屋」。名前だけでもうおもしろい。
プランナー・コピーライターの小柴桃子さんと、株式会社人間の代表でアイデアマン・山根シボルさんによるもの。山根さんは「企画天国」生みの親で、「ホテル 企画天国」の支配人です。
「密室で砲丸を投げたい皆さんの夢を叶えます」そんな人おるかよ!

部屋の中で絶対にやってはいけないこと、それは砲丸投げ(それはそう)。ちゃんとヘルメットを被り、安全対策をした上で壁にえいっ。各方面に許可を得ている企画とはいえ、ホテルの壁に砲丸を投げるという、もう金輪際ないであろうイベントに、好奇心と罪悪感が一気に押し寄せてきました。
実はイベント初日に、鬼の“股間”に砲丸が直撃するという奇跡が発生。みんな豆ではなく砲丸で鬼退治をして(教育上良くなさすぎる)、閉幕時には見るも無惨な姿になっていました。

ベッドでプロレスする部屋

これまた盛り上がりを見せていたのが、「ベッドでプロレスする部屋」。スーパー作家・りんたろうJr.とデザイナー・フルカワコウキによるシュミレスラー「地獄のブラザーズ」。
「プロレスはできない」と、過去のイベントでは記念写真の撮影のみ行っていた彼らが、ついにリングに上がることに。 参加者は、地獄★寿Jr.(りんたろうJr.)か、地獄★福太呂宇(フルカワコウキ)のどちらかに戦いを挑みます。
専用マスクを自作し、リングネームを決め、ベッドイン(リングイン)!
毎試合、客室から溢れんばかりのオーディエンスが参加。ゴングが鳴り、ちゃんと技も決めます。普段は下の階から絶対にクレームが来そうな「ベッドでプロレス」を、参加者も観客も多いに楽しんだ企画でした。

セミダブルの部屋

続いては、数ある客室の中でもひときわ静かな部屋へ。その名も「セミダブルの部屋」。
紙芝居屋のガンチャンが手掛けたもの。
二人で寝られるベッドが一つ置かれた本当にセミダブルの部屋なのですが……

“セミ”が“ダブル”で寝ているのです。こんなド直球のダジャレ清々しい。気持ちいい。

イベント初日だけガンチャン本人による紙芝居が行われたのですが、それ以外の日程は部屋に置かれたテレビで2匹のセミの物語『ダブルベッドの奇跡』を静かに鑑賞します。
切ないけど笑える。笑えるけど切ない。そんな不思議でノスタルジックな感情にさせられた部屋なのでした。
6年間チェックアウトしない男の部屋

そして、2日間とも予約でいっぱいだったのが、益山貴司(劇作家、演出家)、益山U☆G(ごみ役者)、小林欣也(シナリオライター・アナログゲーム制作)による「6年間チェックアウトしない男の部屋」。
益山U☆G演じるボリー(6年間チェックアウトしない男)を説得し、部屋から脱出させる体験型シアター。
8名の参加者とともに私も参加してみたのですが、彼らの演技力はもちろん、その場に居合わせた参加者たちの団結力がすごかった! 物で溢れかえった部屋の中から、ボリーを脱出させるためのヒントを探すのですが、限られた時間のため自然と協力し合う参加者たち。

終演後の記念撮影では、すっかりみんなの距離も近くなっていて、和やかな雰囲気で、みんなを引き込むボリーの人柄につい心を掴まれました。
1日6公演開催した彼らの体力にもあっぱれ!
弱点が表彰される部屋

地下1階のワンフロアで開催されていたのは、ダンサー・シンガーのBON.井上による「弱点が表彰される部屋」。彼女はTikTokやInstagramなどで自身をツルペタと表現するなど、コンプレックスを武器にしたネタ投稿や替え歌で人気を集めています。

そんな普段の活動から着想を得たのが、弱みやコンプレックスを称える授賞式。参加者は自身のコンプレックスが賞として表彰され、レッドカーペットを歩き、授賞インタビューを受けます。レッドカーペットを囲み、授賞式を盛り上げる観客として参加することも可能。そう、欠点を個性として祝う、新しい体験型イベントです。
司会のBON.井上に導かれ、参加者は自身のコンプレックスについて語ります。心配性な人や足が臭い人、夕方になるとつけまつ毛が取れる人など、ネガティブに感じていたはずのコンプレックスが表彰されたことで、帰る頃にはポジティブに捉えられるように。

観客の拍手と「おめでとう!」「素敵!」といった掛け声が最高の空間を作り上げていました。受賞者も観客も終始笑顔で、幸せなイベントになったと思います。
2488日間を感じる部屋

最後に入ったのは、エッセイスト・しまだあやさんの「2488日間を感じる部屋」。

「大阪の人たちが自慢したくなるような、大阪らしいホテル」を目指して、たくさんの人々を迎えてきたTHE BOLY OSAKA。14室という限られた客室数ということもあり、最後まで宿泊が叶わなかった人も多かったそう。
そんなTHE BOLY OSAKAが閉館するまでの2488日間を、つくった人、働いた人、訪れた人、泊まった人。様々な人の出来事や思い出を部屋に同時に再現。物語化して、ショートエッセイと共に展示したのがこの部屋です。

チェックイン時の会話を元にスタッフから客室のドアに届く手紙、客室で鍋パをしたかったお客さん、それに応えるべく卓上IHと鍋を用意したスタッフ、チェックインのときにはなかった薬指に指輪をはめてチェックアウトした人。
客室からの景色がお気に入りで、自前のカメラで撮影しては3時間でチェックアウトした人もいれば、上京するまでの仮住まいとして1ヶ月以上滞在した人もいる。
何気ない旅先での一コマから、一人の人生が変わった瞬間まで、ホテルの客室はいろんな人の物語が生まれる場所なんだなと。
私自身、ホテルで働いていたこともあり、懐かしくも新鮮な気持ちで、客室を出る頃には目に涙が。
閉館したホテルがどんな場所だったのか知った上で、他の客室へ移ります!
面白いかわからないアイデアは、ちゃんと面白かった!
誰もが(?)一度は頭で考えてみたことがあるアイデアを、ホテルの客室で実際に「やってみる」またもないイベント「ホテル 企画天国」。
“面白いかわからないアイデアを実験する”とされていましたが、プランナーたち渾身のアイデアを、本気で楽しんだ参加者たちがいてこそ、ちゃんと面白くなったイベントだと感じました。
閉館したホテル・THE BOLY OSAKAは、「大阪らしいホテル」というコンセプトはそのままに、2029年、北浜の全く同じ場所でおよそ2倍の大きさになって新たに開業します。
3年後に帰ってくる客室で生まれる、新しい物語の数々に今からワクワクが止まりません!



