酒好きの友人と会うと「この前、いい店を見つけたんです!」「へー!知らなかった。じゃあ、あの店知ってます?」という風に、自然と情報交換が始まる。それは情報交換の場でもあり、同時に「そっちがこうなら、こっちはこうだ!」と、お互いが好きなものを自慢し合うような、ちょっと力の入る時間でもある。
酒を飲みながら友人とそんな話をしている時が私はたまらなく好きだ。先日も、ライター・編集者の納谷ロマンさんとやはり同じような会話をしていて、ふと、「じゃあお互いの好きな店に一緒に飲みに行くのはどうですか?」という展開になった。
私と納谷ロマンさんとは、よく飲みに行くエリアも、好きな店の雰囲気も重なるようでいてちょっと違っており、だからこそ面白いと思った。「いいですね!毎回テーマを決めて、好きな店とアテ紹介し合いましょう」と盛り上がり、立ち上がったのがこの企画である。初回のテーマは(この記事が公開される頃には少し季節外れだが)「粕汁の美味しい店」だ。さあ、行ってみよう。
手のかかったおつまみがお手頃価格な「BOY」
まず訪れたのは、ロマンさんオススメの粕汁がいただける「BOY」。最近、お店が徐々に増えつつある江戸堀エリアのニューカマーらしく、私も訪れたことがある[ラムのラブソング]など、コンセプチュアルな人気立ち飲み屋の系列店なのだそう。店主曰く「アテは直球で、ザ・酒場なメニュー多め」とのこと。が、メニューを眺めると、どれも見たことないメニューばかりで、驚かされるのだ。
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店主:金時にんじんと、里芋、大根、ごぼう、豚肉、今日は寒いんでニンニクと生姜も入れました。
店主:そうですね。冷蔵庫にあるものを入れるっていうか。今日の鯛出汁も、鯛のアラがあったんで、それで取って。
店主:うちはいつも播磨の酒蔵の酒粕を使っていて、ベースは一緒なんですけど、粕の量はその日によって調節します。アテにするような濃い粕汁にするか、締めに飲んでもらいたいような、さらっとした方にするか。今日はあっさりめの優しい味にしようと思って、少しだけ白味噌を入れてます。
普段、江戸堀のあたりでお酒を飲むことがあまりなくて、しかも「BOY」さんのようなかっこいい雰囲気の店には割と気後れしてしまう自分なので少し緊張したんですが、連れて行ってもらえてよかった!店主のケントさんも気さくで、おつまみが本当にどれも美味しい。粕汁も最高でしたがロマンさん一押しの「紫キャベツのコールスロー」が好みでした!ぬか漬けをいただいたらそれも美味しくて、ロマンさんと「粕汁の次はぬか漬けの旨い店を紹介し合いましょう!」と盛り上がりました。
メニューの数だけドラマがある「よあけ食堂」
続いて訪れたのは、私が好きな粕汁をサーブしてくれるお店へ。小さな路地が迷路のように入り組んだ鶴橋駅前のアーケード街にあって、70年以上に渡ってこの地で営業を続けてきた老舗食堂。お地蔵さんのお堂脇の路地に沿って、奥へ長く伸びるカウンターが朝9時という早さから出迎えてくれる。
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女将:「太(ふと)っちゃん」です。
女将:今日はまだあります。寒いうちはあるんです。
女将:うちの粕汁、人気なんで、娘の結婚式でも常連さんの席に出したんですよ。
女将:企業秘密(笑)でもお客さんに「豚肉足して」って言われたら足すし「もっと鮭入れて」って言われたら焼いて入れます。うどん、そば、おでんの時期だったらおでんの大根入れたりもします。
午前中から常に盛況で、そして、いつ行っても気さくに迎えてくれる「よあけ食堂」。路地に沿うように長く続くカウンター席に座ると、家庭的な雰囲気に心がほっと落ち着き、ついつい長居したくなってしまう店である。冬季限定の粕汁は柚子の風味が印象的。しっかりと具だくさんなところに、この店のあふれんばかりのサービス精神を感じる。お店の娘さんの結婚式にも振る舞われたほどに常連さんたちに愛されているお味だと聞き、ありがたみもひとしお。久々にこの店に来たというロマンさんもこの粕汁が気に入ってくれたようで、なんだからうれしかった。「いわし汁」など、粕汁以外にもたくさんの名物メニューがあり、軽く一杯飲みたい時にも、ちょっとがっつり食事をしたい時にもおすすめ。
電話番号:06-6972-0992
営業時間:9:00〜17:00
定休日:水・木曜休
SNS:無し
次回予告
[BOY]と[よあけ食堂]、雰囲気はそれぞれ異なりつつも、安くて美味しいものがたくさん食べられて、何より粕汁が美味しい素晴らしいお店だった。ロマンさんと私とで好きな店を紹介し合うこの企画に手ごたえを感じ、「今度は“ぬか漬けの美味しい店”をテーマにしてみますか!」と早くも次回の計画で盛り上がった。せっかくだからロマンさんが「うまー!」と驚いてくれるようなお店を選びたい。さて、どこを紹介しようかなー!