⸺その本は?
モンゴルのゴビ砂漠を中心に、僕自身が21歳から現在までに経験した旅の紀行文「沙漠人間砂漠」です。僕はGPSや地図、コンパスといったナビゲーションの道具を一切持たずに砂漠を旅しており、一度の旅でだいたい2ヶ月弱を砂漠で暮らします。越冬する際は−30度にもなってしまう環境で、ひとり孤独に耐えながら感じるさまざまな心の動きをエッセイにしています。
⸺その本のええところを教えてください。
「旅の本」のふりをして「人生の話」になっているところです。
砂漠というと「見渡す限りサラサラとした砂の世界」を想像すると思いますが、ゴビ砂漠は礫砂漠であり、同じ色の風景の中に大小さまざまな山や丘の「デコボコ」があり、川も存在しています。僕はナビゲーションの代わりにそんな山や丘を擬人化したり精霊に見立てて「オリジナルの神話」を創り出し、それを地図として記録しながら旅をしています。そんな神話は、自分の日常、例えばその時の恋愛や友人との関係から生まれた心の動きなどから生み出しているのですが、正直、普段の僕はポンコツで、思い描いていた理想の大人とはほど遠い生き方をしているんですね。だからこそ「ままならないまま大人になっちゃった人」には「旅の本」ではなく「人生の話」として共感してもらえると思います。
⸺あなたにとって本とは?
「この先もずっと好きで、一生飽きないもの」です。
本を読めば自分が経験していないことであっても、「あっ、この気持ち知っている」と共感したり、深く響いたりする瞬間があります。文字を通して誰かの経験を自分のものにできる、それが本を読む喜びになっています。
僕の旅は砂漠を歩くという異色なものかもしれませんが、読んでもらえば「お前もそうなのか」と共感してもらえるところがたくさんあると思うので、ぜひ読んでみてください。
※掲載時(2026年7月2日)の情報です
取材・文:高津祐次
撮影:高津寫真感




