超生命体の偏愛図鑑

KZ さん

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梅田サイファー ラッパー /映像作家
大阪在住/門真市出身

梅田サイファーのKZさん

ただ山があるように歌う。自分のラップ観を変えた登山バッグ

⸺そのバッグは?
日本のガレージアウトドアブランド「山と道」のザックです。僕自身、旅が大好きで2021年に200日かけて車中泊での日本一周にはじまり、翌年には徒歩で鹿児島から北海道まで4,600キロの道のりを歩きました。このバッグはその旅のときに、奥さんから誕プレでもらったもので、もう使い始めて4年目。登山はもちろん、ライブの遠征にも愛用しています。

⸺そのバッグのええところを教えてください。
登山のスタイルのひとつに「ウルトラライト(UL)」と呼ばれるものがあって、簡単に言えば、極力荷物を少なくして、生身に近い形で山に登って自然を感じるスタイルのこと。これはそのULに特化したバッグなんです。アウトドアのバッグって多機能なイメージですが、これはシンプルな造りでとにかく軽い。とはいえ、背中部分にメッシュのポケットが付いていたり、1リットルの水筒が入るサイズのサイドポケットがあったりと、痒いところに手が届く機能が備わってるんです。自分の場合は2泊3日くらいまでならこのバッグひとつで行っちゃいます。1週間分の荷物となると、もう少し大きいバックパックかキャスターバッグを使うんですけど、個人的にキャスターはあんまり好きじゃなくて。普段から重いものを背負っていると山登りの練習にもなるんで、できるだけバックパックがいいですね。

⸺あなたにとってバッグとは?
はじめての日本一周中、石川県の白山に登ったときに遭難しかけたんです。ガスで真っ白な中、ようやく山小屋に逃げ込んで……翌朝、目の前に広がった快晴の絶景を見た瞬間、自然と涙が止まらなくなった。その経験から山登りが大好きになったんですけど、それと同時にヘコんだんですよね。自分は14歳の時に自殺未遂をしてて、生き方に悩んでいたときに、言葉や文章に出会って感動して救われた。それからラップをはじめて、今では言葉で飯を食うようになって。世の中にあるものの中で、「言葉」が一番すごいものやと思って生きてきたんです。それやのに景色を見て涙をしたとき、「俺、感動するのに言葉なんて要らんかったんや」って挫折に近いショックを受けて、そこから3年くらいソロの曲が書けなくなったんですよね。
でも、最近ようやく自分なりの答えが見つかった気がします。きっと人類が言葉を手にするよりずっと前から、「感動」はあったんですよね。心が震えたからこそ、それを誰かに伝えたくて言葉が生まれた。言葉が感動を作るんじゃない、感動があるからこそ、言葉が必要なんやって気づいたとき、またリリックが書けるようになりました。昔は強い言葉をリリックで投げつけて、誰かの心を動かそうとしてたけど、今は暗闇に石を投げるように自分の「言葉」を放つ。その波紋がいつ、どこに、誰に届くかはコントロールしなくていいんだって思うようになりました。山は、周りに何の影響も与えようとしてない。山がただそこにあるように、ただ嘘のない自分の言葉をこれからも歌って生きたいです。

※掲載時(2026年6月11日)の情報です
取材・文:関根ナオヒロ