超生命体の偏愛図鑑

中武佳奈子 さん

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元子役・女優(44歳)
大阪府在住/大分県出身

図太く生きる。元人気子役がホームレスで得た鬼ころしと着火剤

⸺その道具は?
いつもカバンに忍ばせている、自作の着火剤と火打ち石です。私、過去に2年間くらい大阪の公園でホームレスをしていた時期があるんです。元旦那との離婚をきっかけに生活が困窮して、家を失い、サバイバル生活を余儀なくされて……。たまたま辿り着いた公園で、「師匠」と呼べるおっちゃんたちと出会ったんです。訳ありだけど、元社長だったり、いろんな人生を経験している先輩たち。最初はライターとか買ってたんですけど、おっちゃんたちに「火打ち石の方が早いで」って言われて作ったのがこれ。松の葉とか木くずを丸めて乾燥させて着火剤を作って、石をカチカチってやって火花が落ちた瞬間にフワーッと息を吹きかけるんです。学校では絶対に教えてくれない「生きる術」をたくさん教えてもらいました。

⸺その道具のええところを教えてください。
「火を起こせたらなんとかなる」という、変な自信をくれるところですね(笑)。
他にもホームレス生活の究極ツールが紙パックの「鬼ころし」。おっちゃんたちはみんなストローを刺して持ってるんですけど、飲むだけじゃなくて、アルコール度数が高いから怪我した時の消毒液として使うんです。調味料も大事ですね。「柚子胡椒」を大事に持っているグルメなおっちゃんもいました。それで何を食べるかっていうと、公園の池でスルメを餌にザリガニを釣って、茹でて食べるんです。「色の濃い元気なやつは寿命が長いから食べごたえがある」とか教わって。大阪の公園って面白くて、南風が吹くと聞いたこともない山菜が芽吹いたりする。「都会の中の野生」を知ると、人間ってどこでも生きていけるんだなって強くなれるんです。

⸺あなたにとって道具とは?
「自分に嘘をつかないための戒め」ですね。お金がなくても、家がなくても、誰かに頭を下げなくても生きていける。その自信があれば、どんな場面でも自分の好きな道を選べるようになる。おっちゃんたちが「お嬢ちゃんたちが生きてる今の時代があるのは、俺らがいたからやで」って言ってくれたことがあって。どんな形であれ、生き延びてきたこと自体が価値なんだって、私のプライドになりました。
夢は、離島の廃校を買い取って自給自足のコミュニティを作ることです。学校のレールからはみ出しちゃった子どもや、疲れ果てた大人たちが、そこで塩を作ったり、虫を食べたり、火を起こしたり。「こんな風に自由に図太く生きてる大人がおるんやで」って見せてあげたい。今はその「生きる力」を、少しずつ世の中に返していきたいなと思っています。

※ 掲載時(2026年6月11日)の情報です
取材・文:トミモトリエ