超生命体の偏愛図鑑

CM SMOOTH さん

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DJ/ビートメーカー/米炊DJ(40歳)
大阪市在住/大阪府出身

手間をかけて炊く至高の一膳。生活とDJスタイルを一変させた鉄釜

⸺その道具は?
米を炊くための鉄釜です。家で炊飯に使うだけでなく、僕のパフォーマンスのひとつ「米炊(こめたき)DJ」にも欠かせない相方です。今日は、いつもお世話になっている「MACHETE」さんのキッチンをお借りしましたが、普段は音楽を流しながら炊飯するというスタイルで活動しています。この鉄釜を使うとお米がふっくらと炊き上がるんです。実はもともと食にこだわらない性格なのですが、十数年前にふと「自炊までいかずとも、家で食べるごはんをおいしくしたい」と思い立って……せっかくなら、いちばんめんどくさい方法でごはんを炊きたい! という結論に行きつき、鉄釜を買うことに。ネットショップを見てピンときた南部鉄器の釜に決めました。実際、使い始めるまでの準備も、日々のメンテナンスもめんどくさいんですよ(笑)。最初は油をなじませないといけないのですが、そのためだけに野菜炒めを作ったり。使った後も洗剤を使えないので、たわしでこすって水洗いして、火にかけて乾燥させ、最後に油を塗るという作業を毎日やっています。

⸺その道具のええところを教えてください。
ごはんがおいしく炊けることで幸福度が上がったし、DJとしても変化がありました。米炊DJを始めたきっかけは、とあるイベント。それまで基本的にレコードでヒップホップをかけていたのですが、日本の歌謡曲がテーマのイベントだったのでCDで音楽を使うことにしたんです。そうすると、レコードのときよりも手持ち無沙汰になってしまって。そこで、米を炊きながら音楽をかけることを思いつきました。しかもJ-POPで特に好きな「米米CLUB」とも“米つながり”ということで、これだ! となりました。見た目も選曲も、DJしながら炊き上げたごはんも好評。家で自分のために炊いていたときは「失敗しない」というのが目標でした。でも喜んでもらえたことで、よりおいしく炊きたいという思いが生まれました。試行錯誤を経て理想の分量に行きつきましたし、昆布だしで炊いたり、天然水を使ったり、イベントに合わせてお米の配合を変えたりと、こだわりが増えました。1年くらい前には精米機も購入して、精米の具合を玄米寄りに調整しています。

⸺あなたにとって道具とは?
まずモノとして「かわいい」に尽きます。同じ大きさの鉄釜を2個持っているんですけど、工場ごとに微妙に形が違って、その個性もいいんですよね。それと、2個目を買って初めて“初代”が育っているのを実感しました。油のなじみ具合などによって、扱いやすさが変わるんです。今では、イベント出演があればどこにでも持って行きます。ひとつ5キロ以上あって、その日持ち込むレコードの重さを超えていることもあるのですが(笑)。現場ではやはり興味を持ってもらえて、コミュニケーションが自然と生まれます。米炊スタイルで遠方に呼ばれることも増えました。地元の特産物とごはんを組み合わせるイベントで熊本に呼んでもらったりと、活動の幅はどんどん広がっています。鉄釜は単なる炊飯の道具ではなく、人をつなげてくれる存在になっています。

※ 取材時(2025年3月29日)の情報です
取材・文・撮影:山瀬龍一