⸺そのカバンの中身は?
盆踊りのときに中央に建っている「やぐら」をコンパクトに持ち運べるようにした「マイやぐら」です。カメラ用の三脚の上に、木枠に吊るした提灯を取り付け、周りを紅白の幕で飾れば完成です。だいたい3分くらいで組み立てられます。解体すると、バックパックに収まるサイズになるんです。盆踊りの楽しさをみんなに知ってほしい! という思いで2018年から「毎日どこかがダンスホール」の屋号で普及活動を行っており、2024年は20回以上マイやぐらを持って出かけました。やぐらを作ってくれたのは、友人で家具職人の大島りょうさん(トトトクラフト)です。大島さんは、持ち運べるこたつを作る「流しのこたつ」というユニット活動をしていて、そのやぐらバージョンが欲しい! と依頼したんです。
⸺そのカバンの中身のええところを教えてください。
まずは、どこへでも持ち運べるところです。マルシェや音楽イベント、さらには福祉事業所のお祭りまで、さまざまなところにゲストとして呼んでいただき、みなさんと盆踊りを楽しんでいます。自分ひとりいれば組み立てられる、シンプルな仕組みならではだと思います。そして、やぐらが組み上がると場の空気も自然と「踊るぞ!」と盛り上がるんですよね。置かれた場所をまさにダンスホールに変えてくれる、私の活動のシンボルのような存在です。最近は、住民が減って盆踊りをやめてしまう地域も増えているそうです。そんな町の人たちがマイやぐらを見て「小規模でも続けていこう」と思ってくれたらいいな、とも思います。
⸺あなたにとってカバンの中身とは?
実はやぐらを作ってもらったころは、今のようにイベントに出られるとは思っていませんでした。しかも完成直後にはコロナ禍となり、地域の盆踊りも開かれなくなりました。そんなとき、友だちの子どもを喜ばせようと、友人たちと協力し、近所の公園で手作りの夏祭りを開いたことがあるんです。私はやぐらで盆踊りを、友人はお店や輪投げを出す、といった感じで。それは、自分にとっても忘れられない出来事になりました。身近な場所から遠くまで一緒に出かけ、思い出を共有してきたマイやぐらは、私の相棒といえるかもしれません。
※取材時(2024年8月23日)の情報です
取材・文:山瀬龍一/撮影:山元裕人